澁谷
今年度から社外取締役を3名に増員しようと決めた時、まず浮かんだのが女性取締役を招聘すべきということでした。当社の販売現場では女性スタッフが過半数を占めており、また、お客様も半分は女性です。こういった会社のガバナンスに照らして取締役会に女性がいないのは、もはや異常事態ともいえると考えました。一方、当然のことですが、女性であることは当社の取締役になっていただくための十分条件ではありません。出口さんの経歴を拝見して、国内外の企業において複数の職種を経験され、それぞれにおいて経営レベルで活躍されていることに非常に感銘を受けました。
また、お会いして話を伺ったところ、当社の社外取締役就任を含めて新しいことにチャレンジすることに、非常に前向きな方だとの印象を持ちました。そういったところも、企業理念の「TGビジョン」(企業姿勢)にCHALLENGE TOMORROWを掲げる当社にぴったりな方だと思いました。
出口
大手企業、業界最大手という当社の立場に誇りを持って仕事をされている、社員の方々に多くお会いしました。当社に温かく迎え入れていただき、感謝しております。店舗も顧客として回ってみましたが、商品・サービスの説明やPOPなど、色々な現場の工夫がされていると感じました。携帯端末市場の成長鈍化が予想される中、今後の当社の成長戦略に社員も大きな関心を持っています。大きな組織なので、本社と現場との距離感をいかに縮めて一体感をもって動けるようになるかが、課題の一つだと思います。
「TGビジョン」を始めとする当社の企業理念は、全ての行動の根底に流れる原動力とも言うべき価値観だと理解しており、その浸透に注力し始めたのは、大切なことだと思います。「企業理念 浸透・活用推進プロジェクト」が立ち上がると同時に、WowTalk(インスタント・メッセージ システム)を用い、社長自ら全社員に向けて直接コミュニケーションをとるなど、活発な動きに期待を寄せています。
澁谷
いくつかありますが、第一に「あえて行間と空気を読まずに発言していただく」ことかと思います。社長になって実感したことですが、「あなたの考え方は間違っている」とか「やるべきことをやっていない」と面と向かって言ってくれる人は、社内では得られません。
また、執行側が当然と考えていること、特に前例や業界慣習というようなことについて、「おかしいものはおかしい」と気づかせていただきたいと思います。当然のことながら、私達(執行側)とは異なる経験や知識を高いレベルでお持ちの方ばかりですので、これに基づく経営上のアドバイスを頂戴することも期待しています。
出口 社外取締役には二つの役割があると思います。一つは「経営の健全性や透明性の確保」、もう一つは「企業価値の持続的な向上」です。社外役員は企業の監視役という役割が期待される一方で、株主の声を代表し企業価値の向上に寄与することが求められていると思います。「独立・社外」であるがゆえの中立・公正な目で臆せず物を言い、また異なる業界の知見・経験を引き出しとして、当社の経営に貢献できればと思っています。
澁谷 私は過去上場企業を含めて数社の社外役員を務めたことがありますが、そのような会社と比較しても当社の取締役会では非常に活発な議論が展開されています。必ずしも社外役員の方だけではなく、執行側の取締役間でも、時にはヒートアップした議論となることもあります。私の会議運営のせいかもしれませんが、予定時間オーバーとなることも多く、取締役各位また事務局の方には申し訳ないと思っています。
出口
20名近い役員や事務局が同席する会議の場であっても、自由に発言ができる空気があります。大企業の取締役会で互いに遠慮なく議論できるのは、貴重なことだと思います。
取締役会は毎回4時間近くかけており、質疑応答では厳しい質問も飛び交います。現場主導で動く案件では、本社と現場をネット回線でつなぎ、直接担当者が発表するなどの工夫が印象的でした。今後ますます重要になる成長戦略や中期計画については、重要な議題を取り上げ社外役員も入れて、合宿形式など集中的に議論する時間をとることに、意義があると思っています。
また、澁谷社長が株主総会後の懇親会で即興の演奏を披露されましたが、遊び心を覗かせるこのようなシーンも印象に残っています。
澁谷
主力のモバイル事業でリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにし、また、新たな市場を開拓して行くために欠かせないものだと考えています。
ダイバーシティとはともすると、「今まで恵まれなかった女性の地位を向上させる」とか「障がい者の方々に働く機会を与える」ために、会社がコストを負担することだと思われがちです。そうではなく、当社がモバイル業界の変化を先取りし、新たな市場を開拓するためには、今までの成功体験に縛られた金太郎飴のような集団ではなく、様々なバックグラウンドを持った役職員が全ての階層で力を発揮できるような環境を作り出すことが必要だと考えています。すなわち、ダイバーシティ推進は、会社の未来に対して不可欠な投資であるということです。
忘れてはならないのは、ダイバーシティすなわち「多様性」という言葉は別に性別や障がいの問題ではなく、色々な意味で会社に多様性を持った人達が必要だということです。国籍・宗教・性的志向等、異なる信条・知見・体験を持つ人々が対等の立場で活躍できる環境を整え、実際に活躍していただくことにより、当社はますます良い会社になると信じています。
出口
ダイバーシティとは単なる女性の活用や躍進にとどまらず、男女を問わず、様々な考え方や働き方を受け入れ、促進することではないかと思います。一人ひとりの持てる力を100%ならぬ、110%発揮できる、そのような職場を実現するための取組みが、私にとっての真のダイバーシティです。当社は女性の管理職登用や障がい者雇用など、ダイバーシティ推進への取組みに本腰を入れ始めたところではないでしょうか。
ダイバーシティの浸透度と企業業績は、正の相関関係があることを示した大手コンサルティング会社のデータがあります。価値観や考え方の多様性を受け入れ、活用できる企業を目指し、社外役員としても積極的に取り組んでいきたいと考えています。
澁谷
本日のメインテーマになっているダイバーシティにも関連しますが、過去の成功体験にとらわれない自由な発想が、モバイル並びにモバイル以外の両方の事業分野で必要だと思っています。
その他に、ビジネスの本質を自分の頭で考えること、主体的な事業者としてビジネスモデルを創り上げること、新しいビジネスや技術に関する知識と感性というものが不可欠だと感じています。これらを意識しながら人財育成を続け、必要に応じてキャリア採用も行い、このような能力を持った社員を増やして行きたいと思います。
出口
当社ではこれまで取締役会が一体となって企業価値向上に取り組んできたと思いますが、今後の課題としては、成長戦略が挙げられます。多角化と既存事業の深掘りの、両軸を追っていく必要があると感じています。
また、既存事業モデルにとらわれず、新たな打ち手を次々考案し実験してみる機動力も、培っていく必要があるのではないでしょうか。サントリー社の「やってみなはれ」ではないですが、常に新機軸を探して挑戦し続けるDNAの構築と実現を目指して、社外役員としても誠心誠意取り組みたいと思います。
澁谷 当社は、現在の主力であるモバイル事業における圧倒的なリーディングカンパニーとしての地位をさらに強固なものにするとともに、「コミュニケーション」を事業の中心においた新たな事業分野を開拓・育成して行くことにより、全てのステークホルダーの期待に応えたいと考えています。そのために、事業投資と人財への投資を積極的かつ継続的に行ってまいります。
出口 「経営の健全性・透明性を高める」、そして「企業価値を持続的に高める」。この二つは株主・投資家の方々のみならず、社員やお客様も含むすべてのステークホルダーに対して、果たしていくべきことだと思っています。株主・投資家の皆様から色々のご意見を賜りながら、社内・社外役員一体となって、一層の経営努力を続けていく所存です。