• TOP
  • コラム
  • 中小企業におけるDXについて思うこと(中編)

中小企業におけるDXについて思うこと(中編)

<前編> <中編> <後編>

中小企業がDXに前向きではない理由

それでも中小企業の経営者の皆様の多くは、DXに前向きではありません。理由はいくつかあるかと思います。

1つ目は・・・「DXを考え実施することは面倒くさくて、そんな暇もカネもない」ということです。DXを決断・仕分け・課題整理をし、解決策を策定し、試行錯誤を経て、現場に導入し、成果を上げるに至るまでには、相当な時間とコストがかかります。さらにその前に「何から手を付けていいのかわからない」「ウチのような小さい会社がコンサルにお願いするわけにもいかないし」という声も聞きます。

2つ目は・・・「ウチは昔からやり方を変えてないから、変えるつもりない」と経営者が考えられているからと考えられます。すべての仕事を手作業でおこない、「手作りの味・熟練の技」を押し出し、中心価値とされていて、手作業による人と人とのふれ合いが大切だと信念を持たれている。だからウチはこれでいいのだと。

(※筆者も実をいうとアナログ好きです。私とWeb会議をしたことがある人はすぐ判ると思いますが、それはまた機会があれば)

手作りの味や技は素晴らしい。むしろ是非今後も続けていただきたいと私も思います。でも、これは本業と関係ないでしょ?ここにICTを適用して効率化しても「手作りの味・熟練の技」は全く毀損されない気がしますが・・・なんてところも、頑なに手作業にこだわられる企業経営者がいらっしゃる。その理由は・・・。

3つ目の理由は・・・企業経営者自身が「ICTに詳しくない」もしくは「ICTに詳しい人材がいない」ということです。つまり、経営者や現場幹部がICTに不慣れで使いたくない、「いまさらICTを使った新しいやり方覚えるのはツライ。このままでいい。」だから若い人にも「お前たちもそうだろ?このまま手作業でいいよな?」と。前述の通り・・・これでは若い人が定着しません。

ICT導入が適さない業務

• 定型的な手順が確立されていない業務
• 手作業でおこなうことで製品やサービスに価値をもたらす業務
• 手作業でおこなうことで精度が維持できる業務
• 極めて限られた範囲で実施する業務
• めったに実施しない業務
• 人が直接感情を以ておこなうべき業務
• 人の知識/技術/経験+偶然/ひらめき/ハプニングが価値を生む業務

ここでの「業務」とは、企業内での業務のほか、顧客に提供するサービスや製品も含まれます。あえて手作業でおこなっていることで、製品やサービスに価値をもたらしている業務や製品は多数存在します。

たとえばサービスレベルの高いホテルでは、チェックイン機を導入「していません」。配膳ロボットを導入することもないでしょう。新しくて、広くて眺望がよく、露天風呂が完備した豪華な部屋に泊まり、旨い料理をいただくことだけがホテルの価値ではありません。プロフェッショナルなスタッフとの絶妙な距離でのコミュニケーションのクオリティが、宿泊施設の価値の本質だからです。

一方、ICTを活用すればいいのに・・・と感じることも多数存在します。

ICT導入が適する業務

• 定型的な手順が確立されている業務
• ICTがおこなっても製品やサービスの価値が下がらない業務
• ICTでおこなうことで精度が上がる業務
• 一度に広い範囲にわたって実施すべき業務
• 1年365日24時間継続しておこなわなければならない業務
• いつ発生するか予想できない業務
• 人の感情を挟み込むべきではない業務
• 連続して誤りなく情報を採取・計算・判断・記録するような業務

ホテルに滞在すると、なぜいつまでも手作業なのだろう?何故実施しないのだろう?ICTを導入すれば奇をてらわずとも、もっと便利でラクで業務上のミスも少なくなるのに・・・思う業務は数多く存在します。

・ベッドメイキングや清掃の完了確認
・顧客の嗜好や体調に合った室温・湿度、お湯の温度の設定
・空気清浄、水回り設備の正常稼働確認、アメニティの配置確認
・利用者の利用履歴や嗜好・苦情・要望・対応と反応結果のスタッフ間の共有
・タクシーの予約、食事の予約、予約時間のお知らせ
・ミニバーの利用申告、チェックアウト、近隣飲食店や施設の紹介と予約のアプリ化

ICTを導入するからこそ実現できる新たなサービスもあります。たとえば

・ホテルのスタッフや同宿者による居室への入退のお知らせ
・火災発生時の避難方法の明示、ドリンクの賞味期限の確認・明示

定型的な手順が確立されていない業務についても、ICTがその業務を映像やセンサー、データの入出で捉え、動きや手順を分析し、やがてはその一部を最適化・機械化・自動化することが可能となってくると考えます。めったにおこなわない業務においても、実施するときだけサブスクやクラウドでICTを利用するという方法もあります。

後編に続く

CIO補佐 デジタル推進担当
築瀨 猛

コーポレートサイトへ
PAGE TOP