見守りロボットとは、介護施設や福祉施設で利用者を見守り、危険を検知して知らせるシステムです。単に利用者の動きを検知してスタッフに知らせるだけでなく、利用者とのコミュニケーションや移乗・移動支援機能など、介護業界の人手不足を解消する多機能モデルが登場しています。
本記事では、見守りロボットの意味や必要性、導入メリットについて解説した後、見守りロボットの主な機能を紹介します。見守りロボットの導入を検討している事業者様の参考になれば幸いです。
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見守りロボットとは?
見守りロボットとは、高齢者や乳幼児など日常生活にサポートが必要な人物を見守る目的で活用されるロボットです。なかでも介護を要する方を対象とした介護ロボットは、少子高齢化や介護業界が抱える人材不足の課題解決に役立つとされ、国がロボットの開発や普及に向けて取り組んでいます。
厚生労働省はロボットについて、以下に挙げる3つの要素技術を備え、状況に応じて最適な行動を選択できる機械システムだと定義しています。
- 情報を感知する(センサー系)
- 判断する(知能・制御系)
- 作する(駆動系)
つまり、見守りロボットは対象者を見守る機能とロボットが合わさったものであり、介護・福祉施設や一般家庭など、利用者の目的に応じてさまざまな場所で使用されるロボットの総称といえるでしょう。
なお、本記事では介護施設や福祉施設で活用される法人向けの見守りロボットに焦点を当てて解説します。また、見守りロボットにはいくつかの関連語も存在するため、ここで各サービスとの違いを把握しておきましょう。
見守りサービスとは
「見守りサービス」とは、高齢の親と離れて暮らす方の不安解消を目的としたサービスです。主にセキュリティー会社や介護ベンダーが運営しています。
見守りサービスの内容は、見守り対象となる高齢者や利用者の生活スタイルに応じて、24時間の見守りや安否確認、緊急時の駆けつけなどが代表的です。対象者の要介護レベルは低く、ある程度自立した高齢者の生活を守る目的で利用されます。
見守りセンサーとは
「見守りセンサー」とは、対象者の動きをセンサーが検知して契約者へ知らせるサービスです。高齢者の見守りはもちろん、赤ちゃんやペットの遠隔監視にも用いられます。
なかでも介護施設への導入では、入居者の転倒や徘徊などの事故防止や、介護者の訪室回数の減少が期待できます。見守りセンサーは、対象者の異常検知による安全性の向上を目的に利用されるケースが多いといえるでしょう。
みまもりシステムとは
「見守りシステム」とは、対象者の動きをセンサーで検知して通知するだけでなく、音を出したり施設の介護管理システムと連携させたりできるなど、プラスαの機能を備えたサービスです。主に介護施設や福祉施設で導入され、以下のような機能で対象者を見守ります。
システム | 機能の特徴 |
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赤外線センサー | 居室全体での動作を検知 |
見守りカメラ | 対象者の動きを映像で記録 |
マットセンサー | マットレスのセンサーで対象者の呼吸・心拍・睡眠状態・体動を計測 |
バイタルセンサー | 対象者の血圧・体温・酸素飽和度などを計測 |
人感センサー | 起床や起動など特定の動きを検知 |
コール | 対象者の異常を通知 |
介護管理システム | センサーが収集したデータをダッシュボードで見える化 |
なお、見守りシステムと見守りロボットの明確な違いはなく、同義語として使用される場面も見られます。
見守りロボットの必要性
見守りロボットが注目される背景には、介護業界が抱える人手不足の問題があります。
日本は少子高齢化が進んでおり、今や総人口の3.5人に1人以上が65歳以上の高齢者といわれています。人口の高齢化で介護ニーズが増える一方、15歳~64歳の生産年齢人口は減少傾向にあり、このままでは介護者1人あたりの負担増加は免れません。
そこで注目されているのが、見守りロボットなど介護システムの導入です。従来型はセンサーによる検知・通知機能のみでしたが、近年の見守りロボットは利用者の状況予測や事故原因の分析など、より高度な技術を搭載したものが増えています。ロボットが介護業務の一部を担うことで、職員の負担軽減や介護環境の改善が期待されているのです。
見守りシステムのメリット
介護施設や福祉施設へ見守りシステムを導入すると、センサーやカメラ映像により施設利用者の状態把握がスムーズになります。
2024年に厚生労働省が公表した「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」の調査報告書では、見守り機器の導入後における職員や施設業務の変化について、以下の結果が上位に挙がっています。
- 訪室しなくても利用者の状況がわかる・・・69%
- 利用者の行動パターンが把握できる・・・62%
- 事故原因分析の参考情報にできる・・・62%
- 優先順位の判断ができる・・・58%
- 利用者のペースに合わせた介助ができる・・・53%
【新規・追加で見守り機器を導入した後の変化】
この調査結果から考えられる、見守りシステムの導入メリットを説明します。
介護スタッフの負担軽減
見守りシステムやロボットの導入にともなうメリットは、介護スタッフの精神的・身体的な負担を軽減できることです。モニターから情報を得られれば、利用者の状態確認を目的とした訪室や、走って駆けつける回数を減らせるため、スタッフが適切に動けるようになります。
また、人手不足が懸念される介護事業者では、業務の一部をシステムやロボットに任せることが労働環境の改善にもつながるでしょう。休憩時間の確保など、スタッフの疲労緩和に向けた取り組みも各施設で進められるはずです。
転倒リスクなど介護事故やヒヤリハットの予防
見守りシステムには、センサーで利用者の動きを検知できる機能があります。転倒や転落の予兆があればすぐに職員へ通知される仕組みになっており、導入によって介護事故を未然に防ぎやすくなります。
また、つまずきや踏み外しなどのヒヤリハットも検知するため、発生した状況に応じて対策を練ることも可能となるでしょう。さらには、利用者の行動パターンによる事故も予防できるはずです。
業務効率化
見守りシステムやロボットの導入は、職員の業務効率化にも効果的です。たとえば、一度に複数のコールが鳴ったり利用者の介護中に別の方から呼ばれたりする状況では、モニターでどの対応を優先すべきか判断できます。
また、覚醒や睡眠といった利用者の状態を職員が把握していれば、必要なケアを適切なタイミングで実施できるでしょう。結果的に業務上の無駄が削減され、職員の生産性がアップします。
職員の離職防止
見守りシステムの活用は、業務に対する職員の心理的な負担の軽減につながるため、離職防止にも効果的です。
厚生労働省実施の「令和6年3月介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業の報告書」によると、
業務上のストレスを「弱い」と回答した職員が導入前39%なのに対し、導入後は48%と増加しています。
また、見守り機器の導入によるモチベーションの変化では、やりがいの変化と職場における活気の変化のいずれにおいても
「増加した」と回答した職員の割合が「減少した」よりも多い結果となりました。
これらの結果から、見守りシステムやロボットの導入は職員のストレスを軽減させるとし、離職率の低下も期待できるでしょう。
見守りロボットの主な機能
見守りシステムやロボットにはさまざまな機能があり、施設の特徴や事業者が抱える問題に応じてサービスを選択するのが大切です。
ここでは、見守りロボットのなかでも「みまもりCUBE」に搭載される機能を中心に紹介します。
画像検知・通知機能
見守りロボットにはカメラやセンサーが搭載されるものが多く、画像解析により利用者の動向を把握できる仕組みになっています。なかでも、みまもりCUBEの検知性能は優れており、ベッドからの離床以外に入退室や滞在といった動作の認識も可能です。
また、検知時にモニターやスマートフォンから音声読み上げで知らせてくれる通知機能もあり、作業中でも耳からの情報で利用者の状態を把握できます。職員がモニター前で常時監視する必要もなく、各業務に集中して取り組めます。
同時モニタリング機能
みまもりCUBEの同時モニタリング機能では、各居室の見守り映像をスタッフルームのモニターで一元管理できます。利用者のリアルタイムな様子を一度に映し出せるため、個々の必要性や優先順位に応じた介助が可能です。
プライバシー保護機能
利用者のプライバシーに配慮しつつ「見られている」というストレスを軽減させるなら、みまもりCUBEに搭載されたモザイク機能で問題を解決できます。これはベッドやトイレなど、指定した場所にモザイク処理を施せるもので、利用者のプライバシー対策に効果的です。
コミュニケーション機能
見守りロボットのなかには、職員に代わって利用者と会話してくれるコミュニケーション機能を備えたものもあります。ロボットの導入により、利用者に対する癒しの提供や認知症対策が可能になるほか、レクリエーションの進行にかかる職員の負担軽減も期待できます。
移乗・移動支援機能
利用者の移乗や移動時にかかる身体的負担を軽減させたい場合、場面に応じて活用できるのが、以下の機能を備えたロボットです。
機能タイプ | 説明 |
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移乗支援(装着型) |
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移乗支援(非装着型) |
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移動支援(屋内型) |
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移動支援(屋外型) |
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移動支援(装着型) |
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排せつ支援機能
介護現場には、以下のように高齢者の排せつを助けるロボットもあります。
- 設置位置の調整やにおい対策が可能な排せつ物処理機器
- 利用者の排せつのタイミングを予測してトイレへ促すトイレ誘導機器
- 下衣の着脱や立ち座りなどトイレ内での動きをスムーズにする動作支援機器
これらの機器は、基本的に利用者が一人で使用できます。
見守りロボット「みまもりCUBE」の導入事例
ここでは「みまもりCUBE」の活用により、利用者の安全・快適な生活を守りつつ、職員の業務改善を行った施設を紹介します。
導入施設名 | 社会福祉法人 佐与福祉会特別養護老人ホームことぶきの森 |
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入所定員 | 29名(要介護3以上の方/要介護1・2の特例該当者の方) |
短期入所定員 | 10名(要支援1・2の方/要介護1~5の方) |
サービス内容 | 生活介護、健康管理、機能訓練、相談支援、余暇活動、外出支援 |
職員配置 | 合計28名(管理者1名、事務員1名、嘱託医1名、生活相談員1名、看護職員1名、介護職員20名、機能訓練指導員1名、介護支援専門員1名、栄養士1名) |
今回みまもりCUBEを導入してくださったのは、利用者が居宅に近い住環境で生活しながら介護を受けられる、「ユニット型個室」の特別養護老人ホームです。施設長の藤井様は、施設が全室個室のため利用者の行動を把握しにくく、居室で転倒が起きても発生原因をすぐに突き止められないことに悩んでおられました。
そこで「みまもりCUBE」を導入したところ、施設で以下の変化を感じられたそうです。
- 今まで不十分だった利用者の状況把握や事故原因の解明が可能になった
- ヒヤリハットの防止策を検討できるようになった
- 夜間は利用者の生活を妨げず安全点検できるようになり、職員による必要以上の声掛けを削減
- 利用者の健康面の向上を感じられるようになった など
施設長の藤井様からは、課題となっていた介護事故の原因解明以外の部分でも、改善が図れたという喜びのメッセージをいただきました。
見守りロボットの導入で使える助成金・補助金
見守りロボットを導入したいけれど、高額な費用で購入をためらう事業者も多いでしょう。しかし、導入の際はほとんどのロボット種別で国や自治体から助成金・補助金を受け取れるため、事業者の費用負担を抑えることが可能です。
以下は、東京都における令和6年度次世代介護機器導入促進支援事業の概要をまとめたものです。
次世代介護機器導入支援事業 | 次世代介護機器導入推進事業 | 見守り支援機器および通信環境の一体的整備事業 | |
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対象施設 |
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対象機器 |
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1台あたり補助基準額 | 60万円~133万4,000円 | 60万円~133万4,000円 | 40万円~1,333万4千円(法人合計額) |
条件 | なし |
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なお、対象施設は事業ごとに細かく定めてあり、助成金や補助金は年度により申請条件が変動します。申請の際は、国や各自治体が公表する情報や公式サイトの情報を必ず確認しましょう。
まとめ
見守りロボットとは、高齢者など日常生活にサポートが必要な方を遠隔で見守るためのロボットです。カメラ・センサーによる映像解析機能をはじめ、通知機能やモニタリング機能、コミュニケーション機能など搭載されるシステムの活用により、職員の業務負担を軽減できたり利用者の介護事故を未然に防げたりします。
また、見守りロボットの働きは施設全体の業務効率化につながるため、結果的に職員のオーバーワークを防ぎ、離職率の低下も期待できるでしょう。導入の際は国や自治体からの助成金・補助金を利用できる場合が多く、事業者の費用負担を抑えられます。
業務効率化を図り、職員と利用者が快適に過ごせる環境構築を目指すなら、見守りロボットの導入がおすすめです。なかでも「みまもりCUBE」は高性能な動態検知機能を搭載し、入居者のプライバシーを保護しながら24時間の見守りで職員の負担を軽減できます。コンセントに指すだけですぐに利用可能なため、介護環境の早期改善のためにもみまもりCUBEの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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